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ホストクラブの「売掛け」と債務整理

私は、公益社団法人「日本駆け込み寺」で月1回、無料法律相談を実施しています。

この「日本駆け込み寺」は、人が生きていくうえで生じる様々な相談をノージャンルで受ける公益社団法人です。新宿歌舞伎町で活動をしていることから、歌舞伎町という場所ならではの相談を受けることがあります。

そのような特殊な相談の一つに、ホストクラブの売掛けの債務整理、というものがあります。

これは、女性がホストクラブで作った「売掛け」を支払えなくなり、ホスト(もしくはホストクラブ)と交渉をして、その債務の整理をしてほしい、というものです。

今回は、このホストクラブの売掛けの債務整理の実情をお話ししたいと思います。

 

「売掛け」回収の実情

ホストクラブでは、通常、お客さんがその場で飲食代金全額を支払うのではなく、「売掛け」を作るのが一般的です。

「売掛け」とは、その時にいわゆる「つけ払い」にした飲食代金の債務のことです。

そして、この「売掛け」を支払うのは当然お客さんなのですが、多くのホストクラブでは、お店に負担がかからないように、お客さんが一定期間支払わない場合には、ホストさんがお店(正確には、お店を経営する会社もしくは個人事業主である経営者)に立て替えて支払うことになります。主にはホストさんの給与等から、「売掛け」の立替払分が天引きされます。

ホストさんが立替払いをした後には、お客さんの「売掛け」債務の債権者はお店ではなくホストさんになります。

さて、給与を天引きされたホストさんは、たまったものではありません。売掛けを回収すれば、店側から天引きされた給与分も取り戻せるのですから、お客さんに対する回収に必死になるのは当然です。

そこで、お客さんの家に直接取り立てに行ったり、場合によっては「自分は暴力団とつながっている」等言いながら、何とか売掛けを回収しようとします。

ホストさんの取り立てが怖い、というのはよく聞くお話ですが、上記のような理由があるのです。

 

債務整理の考え方

このような「売掛け」債務の整理を依頼された場合、支払わなくてはならない飲食代金全額について、月いくらずつであれば支払えるのか、依頼者(この場合はホストクラブのお客さんが私の依頼者ということになります)とじっくりと検討して、その金額での分割払いですむように、ホストさんと交渉することになります。

ホストさんも、一度天引きされた給与が戻ってくるわけですから、最終的には、お客さん側が提案する金額での分割払いを了承する場合がほとんどです。

 

「売掛け」はホスト業界の闇

あるホストさんに聞いたところ、「売掛け」というのは、お客さんに「夢を見させる」ためのシステムなのだそうです。つまり、自分の財力を超えて飲食することができますよ、というものですが、お客さんとしても、一度その楽しさを味わってしまうと、その後も繰り返し「売掛け」を利用するようになり、債務が膨らんでいきます。

前述の通り、お客さんが作った「売掛け」は、まずはホストさんが立替払いをすることが一般的で、ホストさんの生活をひっ迫します。

また、厳しい「売掛け」の取り立てにより、お客さんの生活も崩壊してしまいます。

ローランドさんというカリスマホストがいますが、ローランドさんはお客さんに一切、売掛けを作らせないそうです。つまり、お金を持っている方にしか飲食をさせないのです。

ローランドさんのようなホストさんが増えてくれば、お客さんである女性が自身の財力に幻想を抱き、売掛けを大きくしてしまう、ということは少なくなるのではないでしょうか。

 

ホスト依存からの脱却

このように債務整理は可能なのですが、一番重要なのは、ホストクラブ通いをやめて散財しない生活に戻っていただくことだと思います。ホストクラブ通いは、薬物依存、アルコール依存、ケータイ依存などと同様に、ある種の依存症だと思いますが、この依存症が治らない限り、

 

 

ホストクラブに通う → 売掛を作る → 支払えなくなる 

    → ホストとの関わりの継続 

    → ホストクラブに通う → 最初に戻る

 

 

の無限ループとなり、また債務が膨らんでいくことは容易に想像ができることです。

ホスト依存症(もしくはホストクラブ依存症)から抜け出すには、ご家族等、周囲の根気強いサポートが必要なのは言うまでもありません。

ホストクラブで楽しく飲むこと自体は決して悪いことではないのですが、過度に通い詰めてしまうと、生活が破壊されてしまう恐れがあります。ホストクラブが好きだ、という方でも、節度を守った利用を心掛けたいところです。