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オンライン取引での子どもによるクリックで契約は成立する? ~事業者としての注意点~

近年、お子さんにスマートフォンを持たせるご家庭が増えています。
それに伴い、オンラインゲームでの課金等、未成年者がインターネットサイトで商品やサービスを注文する機会も増えている一方で、未成年者の判断能力が高まっているわけではないので、高額請求された等のトラブルが増加する傾向にあります。
そこでこの記事では、

スマートフォン等でのオンライン取引で、お子さんが商品やサービスを注文してしまった場合に、その契約を取り消しが可能か、どのような場合に取り消しが可能となるのか

について、主に事業者側の視点からご説明します。
なお、現行民法では20歳未満が未成年者となりますので、20歳未満のいわゆる未成年者の行為について、法律上は同一の扱いになりますので、以下では20歳未満の方を一くくりに「未成年者」と呼びます。

 

民法の「未成年者取消」のルール

民法上は、未成年者が行った行為は未成年者の側から取り消すことが可能です(民法第5条2項)。

しかし、これには以下の例外があります。

① 法定代理人(親権者等)が取引に同意をしていた場合
② 未成年者が「詐術」を用いて契約をした場合
未成年者が、未成年者であるのに成人であると思わせる行動をとった場合、この「詐術」にあたります。
③ 処分を許した財産の場合
例えば、与えられたお小遣いの範囲での取引である場合(処分を許したか否かは個々の未 成年者と法定代理人との事情による

 

一般的に、保護者の方が同意をしている場合にはトラブルになりにくいので、以下ではもう一つの「詐術」にポイントを絞ってご説明したいと思います。

 

未成年者による「詐術」とは?

インターネット取引(電子商取引)においてどのような場合に、未成年者が「詐術」を用いたとされるかについては、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」には以下のような説明があります。

「未成年者の場合は親権者の同意が必要である」旨を申込み画面上で明確に表示・警告した上で、申込者に生年月日等未成年者か否かを判断する項目の入力を求めているにもかかわらず未成年者が虚偽の生年月日を入力したという事実だけでなく、さらに未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為といえるのかについて他の事情も含めた総合判断を要すると解される。

 

さらに、上記の「総合判断」の中身については、以下のように記載されています。

 

未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為といえるのかについて、他の事実も考慮に入れた個別の事実に沿った判断が必要である。すなわち、当該未成年者の年齢、商品・役務が未成年者が取引に入ることが想定されるような性 質のものか否か(未成年者を対象にしていたり訴求力があるものか、特に未成年者を取引に誘引するような勧誘・広告がなされているか等も含む)、取引をした価格の多寡、及びこれらの事情に対応して事業者が設定する未成年者か否かの確認のための画面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる内容の表示であるか、未成年者が不実の入力により取引することを困難にする年齢確認や同意確認の仕組みとなっているか等、個別具体的な事情を総合考慮した上で実質的な観点から判断されるものと解される。

 

これを整理しますと、以下のようになります。

 

① 「未成年者の場合は親権者の同意が必要」という表示を画面上で行う

生年月日等の入力画面でウソの生年月日を記入した

という事情だけで直ちに「詐術」に当たるとは言えない。

② 上記の事情だけではなく、以下の事情を加えた総合判断で「詐術」に当たるかが決まる。

・ 未成年者の年齢
・ 商品・役務の性質(未成年者の取引が想定されるか)
・ 事業者の宣伝・勧誘の内容
・ 取引価格の多寡
・ 確認画面の表示内容(未成年者に対する警告の意味を認識させるに足る表示内容か)
・ 年齢・同意確認の仕組み(不実の入力による取引を困難にする仕組みか否か)

 

そして、上記の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」には、「詐術」に当たらないとされる例として、以下のような記載があります。

(取り消すことができる(詐術に当たらない)と解される例)
・単に「成年ですか」との問いに「はい」のボタンをクリックさせる場合
・利用規約の一部に「未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です」と記載してあるのみである場合

 

事業者としての対応策

前述の通り、未成年者が成年月日の入力欄にウソの入力をした、というのだけでは、「詐術」に当たるとは言えません。
そこで、未成年者の契約意思をしっかりと確認するように努めたことを表現するため、例えば

「未成年者が年齢確認の入力欄にウソを書いた場合には未成年者取消ができなくなる場合があります」

等と、「詐術」を行うことへの警告の文言を画面上で明確に表示することが考えられます。
前述の通り、「詐術」に当たるかどうかは、様々な要素の総合判断ですので、上記の対策を講じておけば大丈夫、というものではありませんが、いわゆる「次善の策」ということになります。
とくに、類型的に未成年者との取引が生じやすい取引(オンラインゲームや有料アプリ等の販売)においては、上記のようなリスク管理の必要が高いといえます。