新着記事

弁護士が語る!退職代行のニーズと実態

ここ最近、いわゆる退職代行サービスを使った退職が話題となっています。

私は数年前から、弁護士として退職代行の相談や依頼を受けることが増えてきましたので、実際の事件活動の経験に基づいて、退職代行のニーズや実態について、ご説明したいと思います。

 

「退職代行」とは?

退職代行とは、会社の社員の方が直接に会社に退職の意思を伝えるのが何らかの事情によって難しい場合に、代行会社が社員の方の代わりに会社に退職の意思を伝え、退職の手続を代理で進めるサービスです。

弁護士が行う場合もある一方で、弁護士ではなく、代行サービスをビジネスとしている会社が行う場合もあります。

 

退職代行サービスのニーズ

退職代行サービスを利用したいと考える社員の方は、例えば、

 

・ 以前から会社でパワハラを受けているので会社を辞めたいけれども、退職の意思を伝えると上司からの更なるパワハラにさらされる恐れがある。

・ 会社での業務が原因で適応障害になってしまった。会社を辞めたいが、その連絡のために出社をするのでも、適応障害が悪化する可能性が高い。

 

という場合です。

また、私の過去の依頼者には、会社が本業とは別に経営する飲食店の「飲食代」名目で借金漬けにされており、その借金を返済するまで会社を辞められないと強く言われていた、という方もいらっしゃいました。

そのような場合には、会社にご本人が直接に対象の意思を伝え、未払賃金の支払いを受けることや業務の引継ぎ等の残務処理を行っていくことは事実上難しく、誰かが代わりに会社に退職の意思を伝え、代行を通して残務処理をしていくことが必要だと考えられます。

 

退職にまつわる問題と代行による解決

 

退職の意思を有効に伝える方法

よく、「1か月前に退職を言わないと(すなわち、退職の意思を会社に伝えてから1ヶ月勤務をしないと)退職できない」というようなことを会社から言われたために、これが障害となって退職ができない、というご相談を受けることがあります。

しかし、それは間違いです。

もし就業規則上で、「従業員は、退職予定日の1か月前に退職の意思を表明しなければならない。」等の規定が置かれていた場合でも、それは退職の効果が発生する日が一か月後になる、ということや、退職表明後の期間が欠勤扱いになる、ということに過ぎず、実際に職場に通い続けなければならないものではありません。

 

「上司や同僚が家に来たら」という恐れ

また、実際に私が退職をお手伝いした方の中には、上司や同僚が家に来て職場に戻るように自分に迫ってくるのではないか、という危惧を抱いている方もいらっしゃいました。

経営者が社員さん個人の生活に立ち入ってくる傾向の会社や、ホストクラブからの退職の場合にそのようなお話が多いように思われます。

弁護士が退職代行を行う場合、退職の意思を通知する書面に「依頼者への直接へのご連絡をお控え下さい。」という一文を加えるのが通常であり、これを会社側が守るのであれば、直接に社員さんの家に押し掛ける、という心配はありません。

一方、上記のような一文を会社側が無視する場合には、「根競べ」です。

退職する社員の方も、会社側の電話や訪問には絶対に対応しないようにしていただき、そのような直接の接触があるたびに、逐一代理人から会社側に注意の連絡を入れる。私はこの繰り返しを実践したことがあります。

結果、直接に訪問しても手間ばかりかかり何も話が進まないことを悟った会社側が根負けし、その後は代理人を通して退職手続がスムーズにできました。

 

未払賃金、残業代の請求

次に、ほとんどのケースで残る問題が、

  「勤務した最後の月の給与をどのように払ってもらうか」

という点です。

会社の対応によっては、本人が退職の連絡をしない限り、給与の支払いを行わない、という会社もあります。

また、会社が様々な名目をつけて、給与を相殺処理して、支払いをしない、という例もあります。

そのような場合には、会社との交渉が必要になりますが、退職代行を弁護士ではない業者に依頼する場合には、弁護士法上、未払賃金支払の交渉が出来ません。

そこで、未払賃金や未払いの残業代の支払を求める場合には、退職代行を弁護士に依頼する必要があります。

 

会社から「損害賠償請求するぞ」と言われたら

また、退職に際して会社から、退職によって会社の事業が妨げられることを理由として、「損害賠償請求をする」と言われることもあります。

しかし、とりわけ重要なポジションにいたり、よほど特別な業務に従事しているのでない限り、退職することが損害賠償請求の根拠になることは基本的にありません。

この点についても、退職代行を弁護士に依頼するのであれば、交渉によって損害賠償請求の主張を退けることが可能な場合が多いと言えます。

 

まとめ

以上、退職代行サービスと、退職代行を利用するにあたって論点になる点を、弁護士としての実務経験に即してまとめました。

会社が、上記の具体例のように、退職の手続自体をスムーズに進めるのが難し走であったり、会社が頑なな対応をとることが予想される場合には、退職代行サービスの利用を検討されるのもよいでしょう。

いずれにせよ、退職にかかるストレスと手間を抑えて、次の職業に進んでいくことが重要と考えます。