ECサイト運営にまつわる法律問題 ~BtoC取引の場合・その③(利用規約)~
本記事では、ECサイトの利用規約のポイントについてまとめます。
ECサイトの運営にまつわる利用規約以外の法律問題については、
ECサイト運営にまつわる法律問題 ~BtoC取引の場合・その①~
ECサイト運営にまつわる法律問題 ~BtoC取引の場合・その②~
にまとめていますので、そちらも併せてご参照ください。
ECサイトに利用規約が必要である理由
利用規約は、あまりユーザーに読まれません。
皆さんも、他のECサイトを見るとき、そのサイトの利用規約を長くてよく読まないか、末尾のチェック欄にチェックを入れるために読み飛ばして一気にスクロールしてしまうと思います。
それでも以下の理由から、ECサイト運営に利用規約が必要と言えます。
① 法律で定められたルールに替わる、事業者に有利な取引ルールを設定できる
利用規約が無くても、法律でルールが作られていることであれば、その法律上のルールに従って取引が行われます。
しかし、利用規約も後述のルールに従って作成ができれば、一種の契約になりますので、法律に替わるルールを定めることになり、EC事業者側に有利なルールで取引を行うことができます。
例えば、取引においてどのような行為を禁止行為とするか、また、禁止行為がなされた場合の対応方法等について利用規約で定めておけば、基本的には、法律よりも優先してそのルールが適用されます。
もっとも、どこまで事業者に有利なルールを設定できるかについては、後述の通り制約があります。
② 利用規約をクレーム対応の土台として利用できる
また、取引の細かいルールを利用規約に定めておけば、いざクレームを受けた際に、例えば
というように、クレーム対応の土台として活用する事が出来ます。
利用規約を作るうえでのルール
利用規約を作成するといっても、自由に定めてサイトに掲載すれば良い、というものではありません。
具体的には、以下の点に注意しながら作成する必要があります。
利用規約の内容に関する制約
ECサイトによる消費者との取引は、消費者契約法上の「消費者契約」に当たりますので、利用規約の内容も、消費者契約法に反するものにはできません。
具体的には、
・事業者が契約違反をしても損害賠償責任を負わないとする条項(消費者契約法8条)
・事業者の契約違反等があっても、消費者が解除できないとする条項(消費者契約法8条の2)
・前もって、事業者が負うことになる損害賠償の額を不合理に低額に決めてしまうような条項(消費者契約法9条)
は利用規約に書いておいても無効とされてしまいます。
表示と同意の取得の方法
利用規約の表示および消費者からの同意の取得の方法については、令和2年4月から改正民法が施行されたこととの関係で、新民法548条の2以下の「定型約款」の規定に沿ってご説明します。
利用規約の記載について消費者と事業者が合意した、とみられるためには、
① A 当事者の間で利用規約について合意をするか
B 利用規約を契約の内容とする旨をあらかじめ消費者に表示すること
② 利用規約の内容が、信義則に反して消費者を一方的に害するものではないこと
が必要とされます。
①のルールについて、具体的には、
・取引を行うに際し、利用規約への同意クリックが求められており、かつ、消費者がいつでも容易に利用規約を閲覧できるようになっている場合(上記①Aを満たす)
・商品購入ボタンとともに利用規約へのリンクが明瞭に設けられており、利用規約が消費者に分かりやすく表示されている場合(上記①Bを満たす)
には、①の要件をみたしますが、一方で、
には、利用規約が合意とみなされません。
その場合には、その消費者との取引においては、利用規約は無かったものとなり、民法等の法律のデフォルトルールが適用されることになります。
なお、②の点その他、民法改正への対応については、私の以前の記事(利用規約は民法改正に対応させましょう ~利用規約と定型約款~)に詳しく書いていますので、ご参照ください。
以上、ECサイトの利用規約について、ポイントとなる点をまとめました。
EC事業者にとっては、利用規約の内容や表示方法等は、消費者との取引のルールに関わることですので、具体的に作成される場合には、弁護士等の専門家にアドバイスを求めることをお勧めします。
なお、ECサイトに関する他のポイントについては、以下の記事も併せてご参照ください。