御社のサイトは大丈夫?  ~ECサイトにおける申込み画面の適法性~

近年,インターネット等による通信販売で,商品を売る,もしくは,有料サービスの提供がなされることも増えてきました。

このようないわゆるECは,実店舗を持たないビジネスを可能にする点で,それまでのビジネスの形態を大きく変化させました。

顧客の側からは,ワンクリックで様々な商品やサービスが注文できる点で,非常に便利である一方で,顔の見えない相手に不当に誘導されて意に沿わない商品やサービスを注文してしまうリスクがあります。

そこで,顧客保護の観点から,ECにおける申込み画面についても,法律でルールが規定されています。今回は,そのようなECサイトの「申込み画面」に関するルールについてまとめます。

 

「顧客の意に反して申込みをさせようとする行為」とは?

 

インターネットでの通信販売やエステティック,学習塾等の有料サービスのインターネットサイトでの募集,申込みについては,「特定商取引に関する法律」という法律があり,この法律で,ECサイトの申込み画面について,規定されています。

具体的には,同法の14条1項2号は,「顧客の意に反して売買契約若しくは役務提供契約の申込みをさせようとする行為として経済産業省令で定めるもの」をした場合には,一定の要件のもとで,主務大臣が是正等の指示を行うことができる,と定められています。

それでは,具体的にどのような行為が,この「顧客の意に反して売買契約若しくは役務提供契約の申込みをさせようとする行為」に当たるのでしょうか?

この点については,特定商取引に関する法律施行規則16条に,以下のように定められています。

 

特定商取引に関する法律施行規則16条の

「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」

① 販売業者又は役務提供事業者が,電子契約(販売業者又は役務提供事業者と顧客との間で電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信技術を利用する方法により電子計算機の映像面を介して締結される売買契約又は役務提供契約であつて,販売業者若しくは役務提供事業者又はこれらの委託を受けた者が当該映像面に表示する手続きに従つて,顧客がその使用する電子計算機を用いて送信することによつてその申込みを行うものをいう。この号及び次号において同じ。)の申込みを受ける場合において,電子契約に係る電子計算機の操作(当該電子契約の申込みとなるものに限る。次号において同じ。)が当該電子契約の申込みとなることを,顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと。

② 販売業者又は役務提供事業者が,電子契約の申込みを受ける場合において,申込みの内容を,顧客が電子契約に係る電子計算機の操作を行う際に容易に確認し及び訂正できるようにしていないこと。

 

つまり,

 

1号  クリック等により申し込みとなることが分かるように表示していない

もしくは,

2号  申し込みの内容を,容易に確認できるようにしていない,または,訂正できるようにし ていない

 

 

という場合が「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に該当する,と定められているのです。

 

「ガイドライン」を読んでみる

 

それでもまだ,実際にどのような申込み画面にすれば,「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」をしたと言われてしまうのか,まだ不明確であり十分には分かりません。

さらに詳しい情報については,経済産業省が「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドラインを策定しています。

http://www.notrouble.go.jp/what/mailorder/example.html

以下の通り,このガイドラインには,どのような記載の方法であれば,前述の1号または2号に該当するのか,一方で,どのような記載の方法をとれば,これらに該当しないといえるのか,具体的に記載されています。

 

1号  クリック等により申し込みとなることが分かるように表示していない

以下のような場合には,上記の場合に該当しない(すなわち,顧客の意に反して申し込みをさせようとした,とは言われない)とされています。

 

A 申込みの最終段階において,「注文内容の確認」といった表題の画面(いわゆ

る最終確認画面)が必ず表示され,その画面上で「この内容で注文する」といった表示のあるボタンをクリックしてはじめて申込みになる場合

B いわゆる最終確認画面がない場合であっても,以下のような措置が講じられ,最終的な申込みの操作となることが明示されている場合

ア. 最終的な申込みにあたるボタンのテキストに「私は上記の商品を購入(注文,申込み)します」と表示されている。

イ. 最終的な申込みにあたるボタンに近接して「購入(注文,申込み)しますか」との表示があり,ボタンのテキストに「はい」と表示されている。

 

 

一方,以下のような場合には,上記の場合に該当する(すなわち,顧客の意に反して申し込みをさせようとした,と言われる)おそれがあるとされています。

 

A 最終的な申込みにあたるボタン上では,「購入(注文,申込み)」等といった用語ではなく,「送信」等の用語で表示がされており,また,画面上の他の部分でも「申込み」であることを明らかにする表示がない場合。

B 最終的な申込みにあたるボタンに近接して「プレゼント」と表示されているなど,有償契約の申込みではないとの誤解を招くような表示がなされている場合。

 

以下の I および II のような条件の両方を満たしているような場合には,一般的に,2号で定める行為に該当せず「意に反して申し込みをさせた」場合に該当しないと考えられています。

I

  申込みの最終段階で,以下のいずれかの措置が講じられ,申込み内容を容易に確認できるようになっていること。

A 申込みの最終段階の画面上において,申込み内容が表示される場合。

B 申込みの最終段階の画面上において,申込み内容そのものは表示されていない場合であっても,「注文内容を確認する」といったボタンが用意され,それをクリックすることにより確認できる場合。あるいは,「確認したい場合には,ブラウザの戻るボタンで前のページに戻ってください」といった説明がなされている場合。

II  Iにより申込み内容を確認したうえで,以下のいずれかの措置により,容易 に訂正できるようになっていること

A 申込みの最終段階の画面上において,「変更」「取消し」といったボタンが用意され,そのボタンをクリックすることにより訂正ができるようになっている場合。

B 申込みの最終段階の画面上において,「修正したい部分があれば,ブラウザの戻るボタンで前のページに戻ってください」といった説明がなされている場合。

 

 

一方,以下のような場合には,2号で定める行為に該当するおそれがある(すなわち,「意に反して申し込みをさせた」場合に該当する可能性がある)とされています。

 

A 申込みの最終段階の画面上において,申込み内容が表示されず,これを確認するための手段(「注文内容を確認」等のボタンの設定や,「ブラウザの戻るボタンで前に戻ることができる」ことの説明)も提供されていない場合。

B 申込みの最終段階の画面上において,訂正するための手段(「変更」等のボタンの設定や,「ブラウザの戻るボタンで前に戻ることができる」ことの説明)が提供されていない場合。

C 申込みの内容として,あらかじめ(申込み者が自分で変更しない限りは), 同一商品を複数申し込むように設定してあるなど,一般的には想定されない設定がなされており,よほど注意していない限り,申込み内容を認識しないままに申し込んでしまうようになっている場合。

 

 

上記のような具体例を見ますと,1号は「お金がかかる契約の申込みをする」という顧客の意思決定の機会を,2号は申込みの内容を顧客が実質的に理解をしたうえで申込みを行う機会をそれぞれ保証することに緻密にフォーカスされていると感じられます。

 

まとめ

 

ECサイトの申込み画面1つをとっても,上記の通り細かい規制があります。

この規制に違反し,「顧客の意に反して申込みをさせようとする」方法を採っているとみられた場合でも,直ちに契約が無効になるということではありません。

もっとも,主務大臣より是正の指示を受け,そのことが周知されるようなことがあれば,事業者のイメージが損なわれますし,周知されることがなくても,1から申込み画面を作り直す必要があります。

そのような二度手間を防ぐために,申込み画面を含めたサイト構築の段階で,法規制の存在・内容を確認したうえで進めていくことが望ましいといえます。

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