「水辺の活動と安全を学ぶ 子ども安全セミナー」での講演
7月7日(日曜日)、「水辺の活動と安全を学ぶ 子ども安全セミナー」が開催され、弁護士として「子どもの権利から考える保育・教育施設の安全」というテーマで講演をしました。
このセミナーを主催したのは、
一般社団法人・吉川慎之介記念基金(http://shinnosuke0907.net/)
という子どもの安全管理の活動を行う団体です。
2012年7月に愛媛県の加茂川で、当時5歳の吉川慎之介君がお泊り保育の川遊び中に増水に巻き込まれて亡くなった事故をきっかけにして、慎之介君のご両親がこの法人で活動を始めています。
私は、この吉川慎之介君のご遺族の民事裁判で代理人を務めたことから、吉川さんご両親と一緒に活動をするようになりました。
私が講演で伝えたこと
セミナーで私が伝えたかったことは、主に以下の3点です。
① 子どもの安全は周りの大人が守る
子どもは「安全に生活し育つ権利・利益」があるにもかかわらず、その権利が守られる環境を自分で整えることはできない。そのような環境を整えるのは周囲の大人の役目。
② 安全配慮義務の内容は事案によって異なる
周囲の大人が子どもの安全を守るための作為義務(安全配慮義務)の具体的な内容は、個別の事案によって異なり、一般化できない。
③ まずは周囲の大人が子どもの目線に立つこと
周囲の大人が子どもの「安全に生活し育つ権利・利益」を守るためには、まずは安全管理の意識を持つことが大切。具体的には、子どもの目線にたって、改めて子どもの生活環境の安全を考えること。
上記①から③の各点についてお話しするために,5件の裁判例を挙げて解説をしました。
その他のお話も有意義でした
また、今回のセミナーでは、私以外にも、医師の井上健先生、日本レスキューボランティアセンターの木家浩司先生の講演があり、最後には、小児科医の出口貴美子先生の指導による心肺蘇生法の実習がありました。
井上先生は、「海や川で遊ぶ時の安全性に関するイガク的考察」というテーマでお話をされていました。
統計データから、溺水が子どもの不慮の事故の原因として上位の件数を有することを説明されたうえで、子どもの実際の溺水の仕方について動画を用いてご説明されていました。フィンランドのプールで、遊泳中の子が5分間のうちに溺れていく様子がたまたま撮影された動画では、いかに子どもが静かに音を立てずに溺れていくか、ということが、周囲の人が、その子どもが溺れていることに気付かない様子からも明らかでした。
そして、海や川での溺水の危険の防止のためにライフジャケット着用の重要性を強調されていました。
なお、前述の動画については、吉川慎之介記念基金のホームページでも、公開されています。
溺れている子どもに誰も気づかないという衝撃的な映像ですので、ぜひ一度ご覧ください。
http://shinnosuke0907.net/2088/
木家先生は、「安全」のマインドを持つことの重要性について、防災というバックグラウンドからお話をされていました。
そのなかで、子どもの安全のためにも今の大人の姿勢が重要だ、ということを、以下のような言葉でお話しされていたのが、非常に印象的でした。
「未来を担っているのは子どもたちではない。
私たち大人の姿勢が未来を担っているのである。
未来へのバトンタッチのために、先ず私たちが危険を知り、安全を守る力をつけなくてはならない。」
最後の出口先生の心肺蘇生法の実習は、私にとっては新しい発見の連続でした。
倒れている子ども(場面設定としては溺れている子ども)を発見
↓
声掛け等
↓
気道確保、脈拍の確認
↓
胸骨圧迫、人工呼吸
↓
AEDを用いた心肺蘇生
という手順を一通り練習しました。
胸骨圧迫による心臓マッサージを1秒間ストップしてしまうと血圧が10下がってしまうそうです。ですので、速いテンポで行うことはもちろん、交代等のときも1秒以内に行う必要があります。
また、今回、AED自体に初めて触れることができました。
いざ倒れている人に心肺蘇生を行う事となった場合に、一通り経験しているのと、全く経験していないのでは、大きく違うと思います。その意味で、今回のセミナーで心肺蘇生法を体験できたことは非常に良かったです。
このセミナーの内容については、以下のテレビや新聞でもレポートされています。
NHK: https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20190707/1000032438.html
愛媛新聞: https://www.ehime-np.co.jp/article/news201907080094
朝日新聞: http://shinnosuke0907.net/wp-content/uploads/2019/07/fd1e87dfe8ccfee538869cee261d63fc.pdf
前述の通り、私は吉川さんの裁判で遺族側の弁護を務めた経験から、子どもの安全管理や事故の問題について関心を持つようになり、講演等の活動を行うようになりました。
子どもの安全管理については、今後も皆さまに有意義な情報をお届けしたいと思います。