遊泳中の子どもの死亡事故をどう防ぐか ~オーストラリアの事故から考える~

3月29日,海外交流プログラムにオーストラリアを訪れ,湖で遊泳中だった高校1年生の生徒2名が死亡する,という事故がありました。

神奈川大学付属高校の校長がすぐに記者会見を開き,「危険について学校の認識が欠けていた部分がある。」「このような結果になったことは大変残念。ご家族におわびを申し上げたい」と述べました。

https://mainichi.jp/articles/20190330/k00/00m/040/317000c

2名の男子生徒がどのような行動をとったのか,なぜ溺れたのか,死因は本当に溺死なのか等,詳細はまだ明らかになっていません。ですので,法律的な分析を行うのは時期尚早かもしれませんが,類似の裁判例等も引用し,考えを述べたいと思います。

 

類似の裁判例

類似の事案を扱った裁判例に,横浜地方裁判所平成23年5月14日判決があります。

これは,波照間島で修学旅行中の高校生2名が,遊泳中に沖に流されて死亡した事故です。この判決では,引き潮や高波などでリーフ(環礁)の内から外へ海水が強く流れ出る「リーフカレント」が事故原因であると指摘したうえで,引率の教諭らが

「砂浜に危険箇所があるかどうかを現地の役場や海上保安部に聞かず、下見にも行かなかった。リーフカレントの危険性や遊泳禁止場所だったことを知らず、注意義務を全くといっていいほど果たしていない。」

「周知済みの危険についてのみ調査するのでは足りない。」

と認定し,引率の教諭らの安全配慮義務違反を認めました。

(判例時報2120号65頁)。

 

安全のために求められる調査の程度は?

それでは,野外活動に子ども達を引率する教諭達は,どの程度まで周辺の自然環境等の情報を収集すればよいのでしょうか。

上記の裁判例では,「周知済みの危険についてのみ調査するのでは足りない。」さらには「事前調査の方法として,市販の旅行雑誌を読み,旅行業者の担当者から情報提供を受けたというだけでは,調査を尽くしたということはできない。」と判断されています。

ですので,引率の教諭としては,生徒たちを連れて行く予定の場所にどのような危険が存在するかについて,市販の旅行雑誌や旅行業者の担当者からの情報提供等を前提として,さらに具体的に探索する必要があるといえそうです。

今回の事件の引率教諭は,湖の危険性について,どこまで調査したのでしょうか。

 

評価に値する事後対応

前述の通り,今回起きてしまった事故については,神奈川大付属高校の校長が即座に記者会見を開き,「プログラム自体を見直して再発防止に努める。」とコメントするとともに,遺族に謝罪をしました。

法的責任を問われることを避けたいと思うあまりに,素直に謝罪ができない場合や,事故の事実を公表できない場合もある中で,事故を起こしてしまった側としては,評価に値する対応だったのではないでしょうか。コメント通りに海外交流プログラム自体を見直して,今後に生かしてほしいと思います。

なお,先走って類似の裁判例等を挙げてしまいましたが,遺族が訴訟という手段に出ようと決心されるか否かについては,学校側の事後対応如何にかかっています。今回の事故を発生させてしまった学校側の関係者も,遺族ともに誠実に事故の原因究明と再発防止に取り組んでいくことが望まれます。

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