国際代理店・販売店契約セミナーで得られた3つの視点
とある平日の夜、一般社団法人GBL研究所が主催している国際法務研修に出席してきました。今回のテーマは、国際代理店・販売店契約セミナーでした。
国際代理店・販売店契約について、少し珍しい視点からのお話を聞くことができました。
GBL研究所とは
講師の河村寛治先生によると、GBL研究所のGBLとは、“Global Business Law”の頭文字とのことで、国際ビジネス法の研究団体です。
GBL研究所のホームぺージ
を拝見したところ、国内外の大学や研究機関と提携して国際ビジネスローの研究会を開催する等、とても興味深い活動をしているようです。
得られた新たな視点
さて、今回のセミナーのテーマは、国際代理店・販売店契約でした。
私も弁護士として、代理店・販売店契約にタッチしたことがありましたが、ほとんどは日本語のものでした。英語の代理店・販売店契約についてしっかりとお話を聞くのは、正直初めてでした。
「代理店契約と販売店契約の違い」
「独占的契約と非独占的契約の違い」
等は、わりとよく聞くお話でしたが、いくつか目新しいお話を聞いて新たな視点を得ることができました。
それは、以下の3点でした。
① Distributor≠販売店 Agent≠代理店
日本ではよく、販売店契約、代理店契約という区別がなされます。
代理店は商品の売買契約の当事者とはならずに、売り主の代理人としての機能を有するのみであるのに対し、販売店は商品を売主から自身で購入して一度商品の所有権を得た後に、買主に売り渡します。
そして、英語では
という説明がよくなされますが、英文契約では、必ずしもそのような意味になるわけではありません。
契約書でDistributorというワードを使用していても実質的には代理店の場合もありますし、Agentというワードであっても販売店である可能性もあるそうです。結局、販売店なのか代理店なのかを見分けるためには、
という必要があることになります。
例えば、販売店の場合には、次のような条項で、その役割が販売店である(つまり、販売店自身の名義、計算とリスクで商品を購入する)ことが明確にされます。
“Distributor agrees to sell in it’s own name and for it’s own account and risk in the Territory、 the Products supplied by Seller、 Distributor is free to fix the sales terms to the customer in the Territory…”
② 独占禁止法に抵触する恐れ
次に、販売店契約のTerritoryの制限の仕方によっては、各国の独占禁止法に違反する可能性があります。
具体的には、販売店契約等で、販売店に対して販売地域や販売先の制限等を課すことが、競争を制限する行為となることから、独占禁止法の「不当な取引制限」や「不公正な取引方法」に該当し得るということです。
これについては、日本の独占禁止法のみが問題になるわけではなく、商品を販売しようとする国の独占禁止法に該当するかを個別に確認する必要があります。
③ 立場の弱い代理店を守る?代理店保護法
また、代理店は商品の売主に比べて相対的に立場が弱くなりがちであるため、多くの国で「代理店保護法」が制定されています。
国際取引において、外国の売り主から自国の代理店を守る必要がある場合には、代理店保護法が制定されます。
例えば、外国の会社が商品を売ろうと思い、当初は代理店と契約をして商品を売ってもらいますが、商品が普及した後に代理店を切り捨て、自社で販売をしようとした、というような場合には、国家としては自国の産業である代理店を守りたいと考えるでしょう。
各国の「代理店保護法」は、そのような場合に、売主側からの代理店・販売店契約の解除を制限して、代理店が切り捨てられないようにすることを一つの大きな目的とした法制度です。
なお、この代理店保護法に相当する法律は、日本にはありません。もっとも、日本でも、長期継続的契約関係の終了の場合には、やむを得ない事由がないと代理店契約を解除できない、という判例も存在しています。
商社の方のお話は面白い
今回、日本の大手商社で代理店契約や販売店契約に携わられていた先生の授業を受けることができました。
企業の担当者として、国際的な取引の最前線でお仕事をされてきた方ですので、弁護士からは聞けないようなお話も聞くことができました。
商社出身の方が講師をされる国際契約実務の勉強会があれば、積極的に参加しようと考えました。